Ubisense SmartSpaceが空間コンテキストを認識する仕組み

2000 年代初頭、コンピューターが現実の物理世界を理解するためには、センサーが認識する空間情報を取り込み、コンテキストを解釈するソフトウェアが必要であるとUbisense の創設者たちは気付きました。

生の位置情報 (x, y, z座標)は、何らかの構造とコンテキストがなければ意味をなさないのです。

誰かがそのソフトウェアを作らない限り、コンピュータは私たちが見ているような、物や空間、動き、相互作用に満ちた世界を見ることができないだろうと考えたのです。

空間コンテキストの重要性

Google がGPS 座標は地図なしでは役に立たないということを理解していたように、土地や河川、道路や野原、高速道路や一般道といったコンテキストが必要なのです。道路や地形の巨大なデータベースと、人や車の動きを理解することで Googleマップはナビゲーションを助けてくれますが、GPS データだけがあっても、その他のコンテキストがなければナビゲーションすることはできません。

SmartSpace もGoogleマップと同様に、既存のデータに位置情報のコンテキストを追加して、データの価値を高めます。例えば:

  • 「その車はBMWの5シリーズです」

– この情報は有用ですが、活用は難しいです。

  • 「この車はセクション46に停車していて、5 シリーズモデルです。赤いシートベルトがありません。赤いシートベルトが購買部に納品されたので、この車が完成となるよう1つ送ります」

– この情報は有用であり、車の組み立て完了までのプロセス全体をより効率的にします。

位置情報のコンテキストがなければデータは実用的ではありません。

SmartSpace は、現実世界のコンテキストを追加してより良い意思決定を行うのに役立ちます。位置データ自体は価値がありますが、既存のデータに追加された位置情報のコンテキストは変革をもたらします。

Googleマップがその一例です。Googleが目的地までの道順を教えてくれることは、実は紙の地図が提供する以上の価値を与えてはいないのです。確かに便利ではありますが、Google以前にもナビはできたし、Googleがなくてもナビはできます。

交通情報というコンテキストを加えると、Google マップの価値は大きく変化します。

最短ルートを選択し、リアルタイムで減速を警告し、ルートを変更することができます。数時間の運転でも到着時間を数分以内誤差で特定することさえできます。Google マップは、交通状況に関係なく、移動を最適化し、時間通りに到着できるようにします (カレンダーに表示される予定にいつ出発するかを教えてくれます)。 Google マップは移動のプロセスを変革したのです。

Ubisenseによるプロセスの変革

Ubisense SmartSpace もこれを行い、既存のデータに位置情報のコンテキストを追加して、データの価値を高めます。Ubisense SmartSpace は、物理的な空間に存在する重大なデータのギャップを埋めます。

従来のIoT戦略は、手作業のプロセスには対応していません。代わりに、インターネットに接続された「モノ」を含む自動化されたプロセスの改善に焦点を当てています。しかし、多くのプロセスにはインターネットに接続されていないアセット、デバイス、および人の移動が含まれます。Ubisense SmartSpace はこれらのプロセスに対応し、改善しています。

組織がますます柔軟で変化しやすいプロセスを採用する中、このデータ ギャップを埋めることは、プロセスの真の現状を明らかにし、エラーを防ぐために不可欠です。

「動く」アセットを処理するプロセス(組立ライン上の自動車など)は、「マニュアルプロセス」とも呼ばれ、通常、パフォーマンス低下の 5 つの根本原因のいずれかに悩まされます。

  1. 位置: 物や人が見つからないか、間違った場所にある
  2. 相互作用: 2つ以上のものが一緒になっている、または一緒になっていない
  3. 数量: 特定の場所に物が多すぎる、または少なすぎる
  4. 時間: スペース内の滞在時間が長すぎる、または短い
  5. 順番: 物事が間違った順序で起こっている

これらの根本原因に対処するために、コンピュータ システムは、重要なオブジェクトや空間の物理的な位置、動き、相互作用などの側面に関して、人間と同じように現実世界の情報を感知して応答する能力を必要とします。十分な精度と豊富な情報を維持すれば、最も複雑なプロセスであっても、大規模に可視化、測定、制御できるようになります。

Ubisense SmartSpaceとは

Ubisense SmartSpaceは、構造化されていない識別、位置、移動のデータストリームを意味のあるイベントに変換し、監視、報告、制御できるモジュラー式のソフトウェア プラットフォームです。

センサーデータと記録システムを接続するための豊富な実績のある統合機能とコーディング不要の開発環境を備えており、産業規模で必要不可欠な位置情報アプリケーションを設定のみで構築することができます。

Ubisense SmartSpaceのアプリケーション

SmartSpaceは次の3つのアプリケーションを備えています。

可視化アプリケーション

可視化アプリケーションにより、遠隔地のユーザーはサイト全体のオブジェクトの位置と動きを見ることができ、複雑な環境でも簡単にモノを見つけることができるようになります。SmartSpaceには、ブラウザベースのインタラクティブな地図、強力な検索、自動アラート、カスタムヒューマンマシンインターフェイスが含まれており、常に情報を提供できるようサポートします。

プロセス アプリケーション

プロセスアプリケーションは、実際のイベントと計画されたイベントを比較して、これまで知られていなかったプロセスのパフォーマンスを測定し、ユーザーにインサイトを提供します。 SmartSpace は、ノーコードのビジネス ルール エンジンを使用してプロセス ロジックを定義し、任意の記録システムとリアルタイムのデータを連携して、発生した異常を検出して記録します。システムは常に最新の状態に保たれ、ユーザーは標準的なレポートとカスタマイズ可能なレポートの幅広いセットを通じてインサイトを得ることができます。

制御アプリケーション

制御アプリケーションは、環境内のオブジェクトの物理的な位置または動きに関するセンサー データを使用して、動作を検証し、接続されたデバイスを人の介入なしで直接設定します。SmartSpaceは低遅延の制御機能を備えており、プロセス全体の自動化を可能にし、機器の不正使用や安全でない使用を防止することができます。

SmartSpaceのアーキテクチャの中核をなすのはスケーラビリティとリアルタイム性能であり、ユーザーは、小規模な設備から数千のセンサー、デバイス、資産、人を含む大規模なサイトまで、すべて予測可能な性能でアプリケーションを構築することが可能です。SmartSpaceはモジュール化されているため、ユーザーは特定の位置情報アプリケーションに必要な機能のみのライセンス取得することができます。

SmartSpaceの活用用途

SmartSpaceは次のように利用できます。

  1. スマートなアプリケーションや選択されたものを構築するためのプラットフォーム
  2. 資産追跡、トルク管理、ツール制御・管理、ヤード管理、配車管理などのアプリケーション
SmartSpaceがビジネスシーンに与えるインパクトの全体像

SmartSpaceでできること

SmartSpace は、一般的な使用のため統合・構築されたライブラリや設定をサポートし、数多くの大規模導入の実績があります。

生産物流: 生産ラインへの部品の流れをリアルタイムで追跡し、停止を防止してリソースを最適化します。

ツール管理: ツールの使用を管理・制御し、エラーを防ぎ、プロセスを自動化して生産性を向上させます。

プロセス監視: リアルタイムの位置情報によりプロセスをデジタル化し、生産性、品質、安全性を向上させます。

ヤード管理: 屋内外を問わず、完成品や仕掛品の位置を特定し、検索の無駄を省きます。

ロジスティクス管理: 機器の使用状況を把握し、配送タスクを制御してオペレーションを最適化します。

オフラインリワーク : 組み立て後の製品とツールの動きを追跡して、検査と修正を最適化します。

トルク管理: コードレス組立ツールや製品の位置をリアルタイムに把握し、品質とスループットを向上させる。

シークエンス管理 : 正確なボルトレベルの制御により、重要な締め付け操作のエラーを防止します。

プロセス検証 : 重要な組立作業のエラーを防止し、品質向上と再作業を減らします。

SmartSpaceの差別化ポイント

SmartSpaceには従来のソフトウェアに比べて次の利点があります。

  1. 正確な精度
  2. リアルタイム応答
  3. プログラミングの容易さ
  4. 統合の容易さ

これらについて詳しく紹介していきましょう。

1.正確な精度

位置情報ルールによりエラーを防止

SmartSpaceは、高度なフィルタリングアルゴリズムと現実世界の情報を用いて、ノイズの多い生の位置情報を価値のあるビジネスイベントに変換し、人やシステムに過度な負荷をかけないようにします。
例えば、空間の端にある物体は、位置情報システムから多くの細かいイン/アウトイベントを発生させる可能性があります。SmartSpaceはヒステリシス(履歴効果)を利用して、信頼性の高いイン/アウトイベントを1つだけ生成します。

SmartSpaceによる位置情報の補正方法の解説図

オブジェクトを正しく・きれいに配置

SmartSpaceは、指定された空間で位置情報ソースを検出すると、オブジェクトを適切な位置と向きに配置します。
例えば駐車場の車両や組立ラインの製品などをきれいに配置することができるのです。
これによりオブジェクトが反映されるインターフェイスがクリアになり、接続されたサードパーティシステムが位置情報を正確に捉えることができるようになります。

SmartSpaceの位置情報補正の解説イラスト

位置情報品質のモニタリング

SmartSpaceは、位置情報センサーから受信したデータとその品質をモニタリングし、アプリケーションで要求される許容レベルと比較しながら精度を維持します。データソースの精度が期待されるレベルを下回るか、アプリケーションで要求されるレベルを下回った場合、素早くアラートを出してエラーを未然に防ぎます。

2.リアルタイム応答

ボトルネックなし

SmartSpaceは、サイト全体で応答性の高いアプリケーションを提供します。 大規模な物理空間は、モデル内でセルに分割され、それぞれが位置情報システムからの位置情報イベントストリームを処理できるため、リアルタイムデータが1点を通過することがなく、システム規模の拡大に伴うボトルネックを回避することができます。

データストリームから事実を抽出

SmartSpaceは、センサーデータのストリーム(生の位置情報/座標値データ)を位置イベントに変換した後に空間イベントに置き換えます。アプリケーションに負担をかけずに高性能なセンサーシステムから生成される大量のデータの恩恵を受けることができます。

リアルタイム応答

SmartSpaceは、永続的なデータの処理をディスクから分離し、アプリケーション・ロジックに必要なすべてのデータをキャッシュします。これにより必要なときに待機スペースを利用できるようにし、リアルタイム制御アプリケーションのレイテンシの発生を回避します。つまり、1秒間に数千の位置情報を記録するシステムで、数百の同時接続デバイスを秒以下のレイテンシで確実に制御することができます。

SmartSpace マイクロサービスアーキテクチャは、オンプレミス、クラウド、複数拠点など展開場所を選ばない柔軟なプラットフォームです。マイクロサービスを複製して戦略的に展開することで、大陸をまたいだ低遅延のマシン間制御の実現も可能です。

3.プログラミングの容易さ *パートナー/開発者向け

ビジネスルールエンジン

SmartSpaceは、オブジェクトの位置や状態を利用してイベントを検出したり、アクションをトリガーにすることで、ビジネスプロセスを一連のルールでエンコードすることが可能です。ドラッグ&ドロップ式のインターフェースと内蔵のデバッグ機能により、空間内にオブジェクトが存在するなどのイベントが真となる条件や、特定のユーザーへの警告やシステムの更新など、発生すべきアクションを簡単に記述することができます。

外部開発プラットフォームへの接続

Javascript用の Visual Studio や Vue 開発環境などの一般的なツールと統合できます。

開発、テストと本番環境

SmartSpace は、本番システムのデータをテスト環境に統合し、実際のライブデータを使用したアプリケーションの開発・テストを可能にします。これによりアプリケーションの新規導入、拡張、更新にかかる時間を短縮し、中断することなく、低リスクでの導入することができます。

また、SmartSpaceはスクリプト可能なシミュレーション・エンジンを提供し、仮想オブジェクトを移動させ、シミュレーションしたセンサーデータ(パラメータ化可能なノイズを含む)をデジタルツインに導き、複雑な物理シナリオの再現をサポートします。

4.統合の容易さ

あらゆる位置情報と識別データに接続

SmartSpaceは、業界標準のインターフェースや内蔵されている外部データコネクタ(EDC)を使用して、あらゆる位置情報や識別データに接続することができます。SmartSpaceは、UWB、BLE、RFID、GPS、LoRa、WiFi、5G、バーコード、光学などの一般的な技術を含む40以上の実績ある統合機能を標準装備しています。

複数のトラッキング技術を同時に使用

SmartSpaceは、複数のロケーションテクノロジーを同時にトラッキングすることが可能です。例えば、低コストのRFIDでタグ付けされたオブジェクトは、Ubisense UWBでタグ付けされた別のオブジェクトに仮想的に接続することができ、費用対効果が高く、かつ正確でシームレスなリアルタイムトラッキングを実現します。

複数のトラッキング技術の同時使用の解説イラスト

あらゆる業務システムとのデータ交換

SmartSpaceは、RESTサービス、TCP/UDP、.NET、RDBMS統合などの技術をサポートする拡張可能なAPIを使用して、他のシステムとデータを交換することができます。これにより、重要なコンテキスト情報を、SmartSpace、サードパーティのエンタープライズアプリケーション、レポート、分析、プロセス検出ツールのリアルタイムの位置情報と簡単に組み合わせることができます。

SmartSpaceのコア機能

検索とアラートを備えたインタラクティブなマップ

ウェブマップは、カスタマイズ可能でダイナミックな表示により、どのブラウザー対応デバイスからでも追跡した資産をリアルタイムで表示することが可能です。役割に応じた検索とアラート機能により、ユーザーは常に最新の情報を入手し、コンテキストに沿ったアセットデータから必要な情報を素早く見つけることができます。

柔軟なレポート機能

SmartSpaceには、表形式やグラフ形式の洗練されたレポートがあらかじめ用意されており、SmartSpaceのデータモデルに含まれるあらゆるデータを使用することができます。レポートは、接続されたどのデバイスからでも見ることができ、ユーザーや役割に応じた権限でコントロールすることができます。新しいレポートの作成やカスタマイズも可能で、サードパーティのレポート作成ソフトウェアと簡単に連携できます。

SmartSpaceのレポート機能の一例

カスタムダッシュボード

SmartSpaceのHMI(Human Machine Interfaces)コンポーネントは、現在のリアルタイムデータと過去のレポートデータの両方を使用して、カスタムWebインタフェースやアプリケーション(ダッシュボードや他の多くの種類のデータ駆動型インタフェース)を迅速に作成することができます。Webベースのエディタを使用して新しいインターフェースを開発、テストし、完成したバージョンを公開することができます。

ヘルスモニタリング

管理・監視ツールが充実しているため、RTLS全体とそれを支えるITインフラのパフォーマンス、Ubisenseとサードパーティシステムのステータスを継続的に評価することができます。SmartSpaceは、機械学習によりベースラインパフォーマンスを決定し、AIによりそのパフォーマンスが時間とともにどのように変化するかを評価し、システムが故障する前に積極的なサポートを開始し、アプリケーションパフォーマンスに影響を与えることなく問題の診断と修正を加速させます。

高い可用性

SmartSpace フェイルオーバーは、マシンの障害やメンテナンス、バックアップの際に、スタンバイマシンへの切り替えを自動化します。フェイルオーバーは、異なるオペレーティングシステム上で動作するSmartSpaceサービスの任意の組み合わせをサポートし、アクティブマシンがタイムアウトしたことを検出すると、自動的に継続性を確保するために必要な適切なハードウェアとソフトウェア構成を割り当てます。

SmartSpaceアプリケーションの構築

数十年にわたる産業レベルへの導入経験と、SmartSpaceプラットフォームにおける10万時間を超える開発時間を活用して、導入プロセスの最適化、エラー防止、迅速化を図ることができます。

センシング技術の選択と提案

位置情報アプリケーションに最適なセンサーは1つではありません。ユビセンスは1,000を超える実際の導入事例から、個々のユースケースに必要なパフォーマンス、コスト、信頼性のバランスを実現する最適なセンシング技術、あるいは技術の組み合わせを提案することができます。

3Dモデル構築の自動化

Ubisenseは困難な環境でも数時間で正確な3次元点群データを取得することができます。SmartSpaceは、取得したデータを正確でインタラクティブな3Dモデルに自動的に変換し、これを基にシステム計画を立てたり、位置認識アプリケーションのシミュレーションや構築を行ったりすることができます。

センサーの設置・導入とシミュレーション

SmartSpaceは、高性能な超広帯域Dimension4™センサーシステムの設置・導入を簡素化します。異なるスペースや高さでのカバレージとトラッキング性能をヒートマップでシミュレーションすることができます。また、3Dモデル内にバーチャルセンサーを配置してパフォーマンスを確認することも可能です。

現場を訪問したり、コードを修正することなく、センサーの追加・削除・移動のシミュレーションを、必要な性能レベルに対して適切なカバレッジが得られるまで動的に更新することができます。

3次元空間モデリング

SmartSpaceはドラッグ&ドロップのインターフェースで、実世界のオブジェクトや空間を正確に表現します。オブジェクトの種類ごとにプロパティが割り当てられ、1つまたは複数の3D空間可動範囲を固定またはオブジェクトとともに移動することができます。これらの空間可動範囲は、他のオブジェクトの空間と相互作用するため、ソフトウェア定義のトリガーが作成され、実世界のオブジェクト間に存在する物理的な関係を表現することができます。

空間モデリングは、何百万もの構造化されていないストリーム(現場で起きている事象)を、デジタル化することでシステムが検出、報告、対処できるようにするスケーラブルな方法です。SmartSpaceには、一般的なオブジェクトタイプのライブラリが組み込まれており、新しいオブジェクトタイプをインポートしたり、親オブジェクトタイプからプロパティを継承して素早く作成したりすることができます。